介護現場で外国人技能実習生活用へ 大阪でセミナー開催
介護現場で外国人技能実習生の受け入れが可能となる法改正に伴い、独創的な介護機器サービスを提供するハンディネットワークインターナショナル(大阪府箕面市)が、大阪市内で外国人技能実習制度活用セミナーを開催した。介護業界で慢性的な人材不足が続き、サービス低下や経営不振が不安視される中、介護事業関係者らが人材獲得に向け真剣な表情で講演に聞き入っていた。
介護職員の教育研修を手掛けてきたハンディネットワーク社が、外国人技能実習生の受け入れ機関として実績を積む備中技研協同組合(岡山市)と教育研修分野で業務提携し、介護職技能実習生の育成へ乗り出した。
セミナーでは、ハンディネットワーク社の春山哲朗社長が、「外国人技能実習制度を機に、変わらなければいけない日本の現場」と題して講演。春山さんは介護現場での人材不足の実情を指摘したうえで、「外国人技能実習制度を当面の人材不足を補うためだけに利用するのではなく、必要な人材を確保し、人材をしっかり育てることで収益を上げられる事業経営へ」と、意識改革の重要性を強調。「すぐれた人材をそろえることで介護保険事業以外にも事業を拡大し、安定した収益を上げる中で、若い人たちがあこがれる介護ビジネスを目指しましょう」と、人材教育による成長を呼びかけた。
続いて、備中技研協同組合の松尾和文理事長が、外国人技能実習制度について、資料を示しながら説明。法改正に伴う変更事項も多数あり、参加者は熱心にメモを取っていた。
最後に同協同組合を通じて技能実習生を派遣するベトナムの送り出し機関ビハチコのダオ・クァン・ミン副会長が、ベトナムの現状と実習生の教育環境を報告。ミンさんは「ベトナムには親日派が多い。寒さに耐える北部の人は勤勉で、暖かい南部の人は大らか。高齢者を大切にする文化があるので、ベトナム人実習生は日本でも高齢者をしっかりサポートできる」と、自信を示した。
外国人技能実習生制度は、発展途上国の若者たちが日本で働きながら専門的な技術を学ぶ制度。昨年の法改正で介護現場での受け入れが可能になった。今年夏ごろまでに国が受け入れ態勢の詳細を決めた後、実習生受け入れ活動が本格化する。
介護の現場では深刻な人材不足が続き、介護サービスの低下や経営不振を引き起こしかねない。一部でEPA(経済提携協定)に基づき外国人スタッフを迎え入れてきたが、技能実習生制度が順調に機能すれば、介護現場で人手不足の緩和につながるものとして関心を集めている。
ハンディネットワーク社は外国人技能実習生が介護現場で実習を始める前に義務付けられた介護実技に関する教育研修を担当する。海外の送り出し機関などに派遣される日本人講師の研修にも力を注ぐ。介護の技術と心を育てる人間教育を貫く方針だ。
ハンディネットワーク社は春山社長の父である故春山満さんが創業。満さんは首から下が動かない重度の障害と向き合いながら、車いすを駆って全国を行脚。障害をもつ人や高齢者が本当に望む介護サービスを実現するために奔走していた。
満さんの死去後、事業を引き継いだ春山社長も2015年、専門職ヘルパーが付き添う日本で初めての本格的介護付き旅行企画「グッドタイムトラベル」を開発。あきらめていた高齢者と家族の旅の思い出作りに貢献している。外国人技能実習制度の教育研修では、介護事業者の意識改革や、日本とベトナムの架け橋となる人材づくりへ期待が高まる。詳しくはハンディネットワーク社や備中技研協同組合の公式サイトで。