現場は外国人頼み、地方で深刻化する人手不足 実習生制度に矛盾も

Author: - 19/03/2019

 クレーンがうなり、鉄骨を加工する甲高い音が響き渡る。福井県坂井市にある鉄工所で黙々と働くのは、ほぼ全員が外国人技能実習生だ。穴開け、鉄板取り付け、溶接、塗装とよどみなく作業が進む。

昨年6月に入った中国人男性(42)は溶接の技術者で、仕事は手慣れたもの。「16歳の息子のために働いている。中国では嫁さんをもらうにも金が掛かるし、家も買ってやりたい」。日本語はほとんど話せず、仲間の通訳で思いを伝える。

「日本人の従業員は高齢化していくし、賃金が安いと若い人は入らない。ますます実習生頼みになっている」。鉄工所を経営する男性(41)はあきらめ顔で話す。実習生を受け入れておよそ15年、日本人の職人とトラブルになったり、賃金を巡って数人が失踪したりと苦い経験もした。「やれるだけやって、私の代でこの仕事は終わりにする」

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福井労働局によると、福井県内で外国人を雇用している事業所数は2018年10月末現在で1249社、外国人労働者数は8651人で、ともに過去最高。在留資格は「技能実習」が45%を占めた。

一方、企業の人手不足は深刻さを増すばかりで、県内の有効求人倍率は2倍台の高水準が続く。

政府は外国人労働者の受け入れを4月から拡大する。介護や外食、宿泊など14業種が対象で、新たな在留資格「特定技能1号」は、技能実習生で3年以上の経験があれば無試験で移行できる。

「実習生は出稼ぎ感覚でいる。特定技能1号に移行すると在留上限は5年だが、家族の帯同はできない。長く家族と離れるのは嫌だという実習生もいる」と話すのは、坂井市内の受け入れ監理団体の代表理事。1号になると賃金など日本人と同等以上の待遇が求められ、企業側もコストが増すため「意外とミスマッチな制度。双方にメリットがない」とみている。

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新たな制度で外国人労働者が増えたとしても、企業や自治体からは、賃金の高い都市部に集中するのではと懸念する声も聞かれる。

市民に占める外国人の割合が5・2%と福井県内トップの越前市は新年度に向け「多文化共生推進プラン」の策定を進めている。コミュニケーション支援や子育て・教育支援を柱に、総額1億763万円を当初予算案に計上した。市民自治推進課の見延政和課長は「社会構造上、日本人だけでは成り立たない時代。治安の良さや充実した教育環境は外国人に選ばれるし、日本人にとっても住みよい都市になる」と話す。

市内の外国人に行ったアンケートでは、ベトナム人の9割、ブラジル人の6割が「越前市に住み続けたい」と回答。地域の祭りなど交流イベントへの参加意欲も高い。「地域住民と外国人双方の意識啓発が大切」と見延課長。地域の催しを知らせる外国語のチラシ配布や、公民館での異文化理解講座などにも取り組む考えだ。「生活習慣や文化の違いを超えた、安心できるまちづくりにつなげたい」と力を込めた。